『感染』












じわり じわり、と 身体が蝕まれてくのが解るんだ。
実感すると同時に震え出した手足と、流したくもないのに止まらなくなった涙。

「結局…‥てめーの病気は何だったんだ?」
「さぁ、ね」
「教えねーつもりか」
「違うよ 俺もよく知らないだけだし、きっと皆も解ってない。ただ、もう長くないってのは 解る」
「それは 俺にだって」

お前はこの病気が感染するものだと知っていたんだ。
だから もう会わないと、会えないと言った のに。

「………‥悪ぃ」
「何で、謝る の」
「だって、」
「病気を伝染されたのは リボーンの方、なんだよ?」
「…‥あぁ」
「だから、別に俺は 謝られる必要、ない」
「でも、」
「アンタが勝手に伝染ったんだから、勝手に死ねば いいじゃん」
「………‥」
「俺は 嬉しいんだ、よ?」

俺は十何年もただひたすら、アンタを殺す為だけに生きてきたんだから。

「アンタの死因が、俺から感染した病気だなんて」
「…‥無様だな」
「アンタはね。でもこれで、俺が殺したも同然、だよ」
「満足か」
「多分、ね」

だって、イタリア1のヒットマンのリボーン様が、三流の俺なんかに殺られたことになるんだから。
凄いことなんじゃないの?なんて、思いはする けれど。

「……‥滑稽だね」
「あ?」
「アンタも、俺も」
「てめーは満足したんじゃなかったのか」
「うん、でも やっぱり俺は…‥」
「『殺すなら 自分の手で殺したかった』‥とか?」
「……‥最期までムカつくな」
「なら、いっそ俺を殺さねーか?」

え、と聞き返す間もなく手渡された彼の愛銃が、俺の掌に冷たい鉄の重みを与える。
薄く笑ったリボーンの瞳は もう、死を覚悟しきった人間の物になっていた。

これで 撃てって言うの?

「何、で」
「お前の手で俺を葬れば、満足出来るんだろ?」
「……‥馬鹿なこと 言うな」

どうして俺がさっきから泣いてるのか、アンタなら解る癖に。

「馬鹿だ」

もう会えないって、会わないって言ったのに。

「馬鹿、だよ」

どうして来たんだよ。
どうして抱き締めたんだよ。
どうしてキス、したんだよ。

「やっぱり、アンタが悪いんだ」

安全装置を外し、こめかみに銃を突き付けながら。
唇を重ね、毒を分かち合うような最期の口付けを交す。


愛していた?

確かな答えなんて要らないから、どうか互いの涙が止まるまで、息の根が止まるまでこのままでいさせて。

何かが崩れ落ちる音が聞こえたときにはもう、二輪の綺麗な華は散って逝くから。


指に掛けられた引き金が引かれることは、永遠に ない。













手付かずになってリボ受けお題.シリアス08.
ランボの病気は何だったんだろう..




†2006.3.22