『ボンゴレ式契約』









「なに、お前まさか不感症なの?」

骸の首筋を軽く舐め上げた綱吉は、啼きもせず笑ってばかりいる骸を見て尋ねる。
聞かれると、骸は更に楽しそうな表情を浮かべて目の前の綱吉の頬に手を当てる。その冷たい頬が自分の暖まった掌から熱を奪っていくのを感じると、小首を傾げて微笑んで見せた。

「気持ち良いから笑うんですよ」
「いや、それは気持ち悪いだけだから」
「クフフ」
「気持ち悪いってば」
「二度も言いましたね?」

軽蔑の眼差しを向けても、この男はまた笑うだけだった。
そんなに面白いのか、それともマゾなのか。多分後者だな、と考えてみると何だか軽く引いてしまう。
それでも相手にしてしまう自分は、もしかしなくてもサドってやつなんだろうか。

「ボンゴレ、」
「…‥笑ってるだけじゃつまんないんだけど」
「なら、啼けばいいんですね」

骸は普通にそう答えると、綱吉の首に腕を絡ませ自分の方へ引き寄せた。
丁度綱吉の唇が骸の肩に当たるような状態になると、引き寄せられた男はうんざりしたように顔をしかめる。

「これは何か変だろ」
「?、何がですか」
「………‥」

質問に答えられないのは自分の語彙不足もあるだろうが、それ以前に骸の言葉がおかしいからだ。
コイツの考えていることは解らなくもないが、それ自体がまたおかしい。脳味噌の構造そのものがおかしいのだろうか。

促されたままに、再び骸の肌に舌で触れる。
小さく身じろいだ骸は首に絡めた腕を少し緩め、左の掌で綱吉の柔かい髪の毛を下から掻くように撫で上げた。
骸が呼吸を荒くしていく度、綱吉の露になった首筋を彼の吐息が擦めていく。

「ふ、はぁ……‥ボンゴ‥レ」

耳元に口を寄せて言う骸の甘ったるい声に、自然と気持ちが高ぶっていくのが解った。
本当はこのまま頂いてしまうのも悪くないんじゃ などと考えてしまうが、少なくとも今日はまだ。

「っ‥ボンゴレ…‥」

繰り返された自分を呼ぶ声を聞き、綱吉は骸の迷彩柄のシャツの中へと手を滑らせる。
背中の筋肉を確かめるように指を這わすと、骸は綱吉の髪に触れている手で、彼の頭皮に爪を食い込ませた。
痛みを伴いガリッという音が聞こえた気がして、思わず顔を上げる。

「いて…‥何してんだよ」
「すみません、つい」

答えた骸の顔には、しっかりと笑顔が刻まれていた。わざとか。
残念ながら俺はお前と違ってマゾじゃない。痛いのはもう慣れてきたけど、正直ごめんだ。

「…‥もう声出さなくていいよ。どっちにしろ気持ち悪いだけだし」
「おや、随分と我儘なんですねぇボンゴレ10代目は」

本当は気持ち悪いというよりも、このまま流されてしまいそうな自分が嫌なだけだった。
どうせこの男は己の感情でさえも操作出来るのだろうから、そのくらいは容易いはずだろう。それなら手早く済ませた方が良い。

「解りましたよ」

そう言いながら、骸は血液の所為で身体に張り付いてしまったシャツの襟元を自分で裂く。
鎖骨辺りを大きく開くと、両腕を広げ、さぁどうぞ とでも言いたげに笑った。

綱吉は骸の腕を掴むと、鎖骨に一度噛みつく。それをまた舌でなぞりながら、骸の顔を伺うように見上げた。
余裕の笑みでその様子を見る彼を、本当に…‥

「これが、ボンゴレ式の契約なんですか」
「…‥そうだよ。俺は皆にこうしてきた」
「クハハっ…‥随分と愉快なファミリーなんですねぇ」
「もうそろそろ良いだろ、これで遊びは終わりだよ」

掴んでいた腕を放し、その手を骸の背に回して抱き込んだ。
這わせていた舌を一端離すと、再びそこへ唇を吸い付ける。



ちゅっ という音を立て、


綱吉は骸の白い肌にキツく紅い痕を残した。


「大変なんですね、ボンゴレも」




これで本当に、お前は。









初めて書いたツナ骸.
負けたむっくがツナの部下になったらいいなっていう.
ボンゴレ式契約→部下になったらツナがキスマークをつける だといいなっていう.
自分はボンゴレを何だと思っていたんだろう(‥‥‥).
今年最初がこれでした..ツッコミ所が多すぎる.




†2006.1.4